2011年3月4日金曜日

西ヶ原字幕社 林原圭吾さん

この夏「鯨とり」、「風吹く良き日」が劇場にてリバイバル上映になりますが、実は「鯨とり」はDVD販売を来年の1月(予定)に控え、現在着々と字幕制作・吹き替え制作の作業が進められています。

そのDVD関連の作業に加え、
劇場上映時の字幕もご担当されている有限会社西ヶ原字幕社取締役・林原圭吾さんにお話をうかがいました。

林原さんの初・韓国はいつごろ、どんな形でしたか?
中学校が韓国の学校と姉妹校縁組みをしていまして、1週間ほど釜山に行く機会がありました。それが初・韓国です。

ニューズレターによると、中学校の頃からKBSの日本語放送を愛聴されていたとか。
えぇ。昨年4月からは字幕制作に加え、NHKのラジオ・ジャパンの韓国語放送の翻訳チェッカー兼収録ディレクターも勤めています。

大学時代に初めて字幕を手がけられるのですね。
ソウル大への1年間の留学から帰国して、先輩から字幕のバイトの誘いの留守電が入っていて。MBCのドラマ「ベスト劇場」でした。一話完結の1時間もので。98年です。
それからいろいろとTV番組の字幕などを手がけ、2003年、地上波の「バリでの出来事」の翻訳で認めてもらえたと思っています。

「鯨とり」の字幕を手がけられることになったきっかけは何でしょう?
ブログに詳しく書いたのですが、この名作を埋もれさせてはいけない! と。実はVHSの権利元の会社が廃業していて、このままでVHSが無くなれば、そのままになって消えてしまう恐れがありました。そこでいろいろ調べまして、弊社でこの作品のDVDのビデオグラム権を買いました。僕にとっても初のアン・ソンギ作品がこれで、97年か98年にVHSで見ましたね。

作品にもよると思いますが、字幕が完成するまでに何度くらいご覧になりますか?
作品を問わず、少なくとも3回は全編通して見ることになります。
1)字幕の出入りのタイミングを計る、スポッティングの作業、2)翻訳、3)納品前の流しチェックで合計3回です。

3回以上見たいというベクトルと、そうも言っていられないベクトルがあり、
前者は多くの回数見たほうが内容の理解が深まるから、後者は
・飽きる→誤字や誤訳を見落としやすくなる
・何度も見る時間がない
の2つです。

ですから納期に余裕があり何度見ても飽きない作品は、回数見ます。「鯨とり」は翻訳の前3ヶ月で6回ほど見たと思います。

このDVDにはセリフの解説本がつくそうですね。
はい。この本は韓国語の、映像翻訳の教材としての位置づけです。
前半は全セリフの文法的な解説で、外語の朝鮮科の授業でなされているようなことです。個人的に、語学力というのは、理屈と経験のかけ算だと思っており、それを、こうした形で示せればと思っています。
後半は字幕・吹き替え翻訳の解説をする予定です。

これは私の長年の「恨(ハン)」とでも言いましょうか、十数年字幕制作に携わっている者としてずっと抱いてきた思いを形にしたものなのですが、なかなか自社で権利を持っていないと自由がきかないのです。それが本作品では叶うことになりました。

昔の韓国映画には当時の言論弾圧を受けている韓国国民を、障害者やマイノリティに置き換えた登場人物として描いたものが少なくありません。そういった時代背景や歴史を踏まえて、この作品をきちんと『名作』として扱いたいと思います。

人の創作物(ここでは映画ですが)というのは、作り手が設定ひとつ、セリフひとつ、シーンひとつに思いを込め、受け手がそれを様々に解釈する、時に受け手の置かれた環境から作り手が意図しなかったものさえそこに見出すわけです。
翻訳者としては、まずは作り手の思いを正しく導きだし、そして次に、受け手の様々な解釈があることを踏まえて、それらに耐えるような字幕をつけたいと思っています。

なるほど… 解説本、ますます気になりますね! では、最後に一言お願いします。
劇場にも足を運んでいただき、その半年後にDVDもご購入いただけるとうれしいです。DVD「鯨とり」に興味を持っていただける方がいれば、ぜひご連絡ください。1枚からでも手売りいたします!
私たちは翻訳なり、DVDを作るほうには経験がありますが、物を売ることに関しては、てんで自信がありません。なので、皆さまの口コミが頼りです。

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DVDの予約申込書に映画の半券を添付した方の中から、毎週(!)ペアで1組様を、沖縄・ホエールウォッチングツアーにご招待だそうです(沖縄までの旅費は含まれておりませんが)。そして林原さん個人的には、アン・ソンギ演じるミヌの、家財道具入りコートをきちんと型番から調べて復元して1着プレゼント用に作りたいとか。


写真は「鯨とり」の脚本コピーと88年公開当時のパンフレットを持つ林原さん。
西ヶ原字幕社さんのニューズレター
西ヶ原字幕社さんの 「鯨とり」リバイバル ブログ
西ヶ原字幕社さんの「鯨とり」ツイッター

韓国の歴史・時代背景にも詳しく、ご自身でロックバンドもされていた彼の言葉のかけ算は、何ケタまで増えていくのでしょう…

ビデオグラム権のみお持ちなので有料でのDVD上映はできないそうですが、無料上映会などされている方でご興味おありの方はぜひこちらにコメントを寄せてください。

予約開始等、また発売が近づきましたらこの情報板でも再度ご紹介いたします。
林原さん、お忙しい中お時間ありがとうございました!
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加筆:
解説本ですが、現在の予定としては「普通版DVD、デラックス版DVDセット(DVD+解説書)もあり、解説書も単体で発売」をお考えとのことです。
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1 件のコメント:

  1. 友人からこの名作がDVD化されると聞いて検索しました。
    VHSは持っていますが、綺麗な映像でこの名作がよみがえるかと思うとワクワクします。できれば「風吹く良く日」などもDVD化してください!韓国盤はカットされており、字幕もありません!発売を楽しみにしています!

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