2012年7月15日日曜日

福岡アジア映画祭「ペースメーカー」ティーチイン1

福岡アジア映画祭にて昨夜行われた「ペースメーカー」ティーチインです。最初、キム・ダルジュン監督がご登壇、その後アン・ソンギさんがご登壇なさいました。
(ご登壇の写真は追って追加いたします。ネタバレがありますのでご注意ください)

(写真:今年2月、韓国で公開時にソウル駅にて)

Q1:主人公は五輪国内選考会の大会を完走していないのに国家代表に選ばれました。そのことを韓国国民は、世論は許すのでしょうか?
A1 :(苦笑)映画だから可能な話だということで。昔はそのようなケースもあったように思います。普通、世界大会は個人の記録の問題ですが、五輪になると国の問題になります。ですから3人走者を選ぶ時、2人はメダル獲得の可能性のあるランナー、最後の1人はペースメーカーを選ぶ、ということもあるでしょう。[そういう選考方法は]韓国だけでなく、他の国でも考えられることではないでしょうか。まぁ韓国の世論はゆるいですから(笑)、特に公開時に問題にはなりませんでした。

Q2: ロンドン五輪のシーンはとてもリアルでした。どのようにして撮影されたのですか?
A2:実際にロンドンロケを行いました。 2回渡英しましたが、最初はロケハン、2回目に撮影を行いました。天候にも恵まれたのと、ちょうど陽も長く4〜21時の間は明るかったので。5日間交通規制をしてレースシーンを、そして選手と並走して撮影した部分はあとからCGで合成しました。[CG合成は]60%ぐらいではないでしょうか。

Q3:アン・ソンギさんは国のメダルのため残酷な[監督]役を演じられました。誰かモデルはいるのでしょうか?
A3:もう亡くなりましたが、[1994年広島アジア競技大会でマラソン金メダルをとった] 황영조を発掘した監督がスパルタ方式で有名でした。少し参考にした部分はあると思います。

(以下、ネタバレ含みます)
Q4:ラストシーンはなぜあのようになさったのですか? 最後に別の大会でVサインを出して終わるシーンです。
A4:医学的に、科学的に考えますと、もうマノは[ロンドン五輪の後]走ることができません。でも観客がこの映画を見終わった後、喜んで帰ってもらうために、よいラストにすべきでは? と考えました。

Q5:マノ役の特殊メイクの意図は何でしょう? 
A5:義歯をしている点ですね? いろいろ理由はありますが、まず金持ちの家に生まれた場合、幼い時に矯正を受けることができるので、あのような[出っ歯な]歯並びでいるということは貧しい家庭に育ったということを意味しています。
2番目の理由は、これはマラソン映画なので、選手を正面より横から撮るシーンが多いです。 強烈な横顔を撮りたかったのです。

そして3番目の理由はイメージしたのが年老いた馬が必死に走る姿でした。そこから来ています。

Q6:今回のキャスティングについてすんなり決まったのでしょうか?
A7:苦労は特になかったです。主人公を演じたキム・ミョミンさんの持つイメージは元々よいものでしたし、 依頼したところすぐにOKをもらいました。「年をとったマラソン選手」という役を演じることでイメージを変えたいという思いもあったようです。アン・ソンギ先生からも監督役の快諾をすぐにいただきました。

ここで福岡アジア映画祭・前田代表が特別ゲストとしてアン・ソンギさんをご紹介なさいます。

Q8: 撮影で一番ご苦労なさったことは何でしょうか?
A8:アン・ソンギさん)私は座るシーンの多い監督役だったのでキム・ミョミンさんが走るのを見て心が痛かったです。できることなら私も一緒に身体を動かして走りたかったのですが。

Q9:私も[市民ランナーとして]普段から走っていますが、アン・ソンギさんも走っていらっしゃるのですか?
A9:アン・ソンギさん)はい、常に運動はしていますし、走っています。私のこのスタイルを見て分かりませんか?[と腰に両手をあて片足をすっと前に出し、モデル立ちをするアン・ソンギさん。会場大喝采]

Q10:監督とのエピソードなどあれば教えてください。また監督の次回作等、予定がありましたら。
A10:アン・ソンギさん)キム・ダルジュン監督は舞台、ミュージカル[『ヘドウィグ』『スリル・ミー』『ダンサーの純情』『スピットファイヤーグリル』『アタック・ザ・ガス・ステーション』など]を演出されてきた方ですが、映画は本作が処女作です。なので制作陣もいろいろと大変だろうと思いました。映画製作にはたくさんのお金とスタッフが必要です。このような規模の作品を処女作として手がけることになり、大変ではと思いました。新人監督としては内容のスケールが大きすぎて細部まで神経を使えなかった部分もあり、次回はもっと小さい規模のヒューマニズムを扱うような作品を撮られては、と思います。

キム・ダルジュン監督)今、[脚本を]準備している途中です。次回は小さい規模の作品を一所懸命撮りたいと思います。よろしくお願いします![深くお辞儀をなさる]

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