
Q:エンドロール直前の文字は?
[管理人加筆:2009 Luz y Sonidos。スペイン語で「光と音」。シン・ヨンシク監督が外国語大スペイン科専攻だったからではないでしょうか]
A:映画の制作会社の名前です。
Q:アナログ的な世界をデジタルで撮られたこの作品ですが、何か撮られる時にお考えがあったのかお聞かせください。
A:正直言いますと、フィルムで撮りたかったのですが予算の問題でデジタルになりました。制作工程は違うことはなかったように思います。アナログの部分をたくさん入れたというのは主人公が若いときからほとんど外にでないような感じで、仕事場に閉じこもっている、音楽も30年前の音楽をずっとくりかえし聴いているという前提になっておりましたので、全体的にはアナログっぽいつくりになっています。また主人公が写真を撮っているということもありましたので、フィルムでできればとずっと考えていたのですが、今回デジタルで撮っても問題はなかったと思います。
Q:ラストシーンが現実でないような不思議なシーンで終わっていましたが。アン・ソンギさんが入院してしまってどうなるか分からない、この先が分からない、現実かどうか分からないような終わり方にされたのはなぜでしょうか?
A:実はこの作品はアン・ソンギ先輩と「撮りましょう」と3〜4年前から計画していたんですね。ところがなかなか制作資金が集まりませんでした。制作会社を4社まわりましたが、どこからも「エンディングを変えろ」と強い圧力をかけられ、(自分の)思い通りのエンディングにできないのではないかと思っておりました。最終的には自分で制作関係も引き受けることになり、思い通りのエンディングを撮ることができましたが。
このシーンは最初から思い描いていたんですね。この作品に関わらず私がつくる映画のエンディングは一貫しています、それは「人生の不条理を認識した瞬間を表す」ということです。そういった意味でもこのエンディングはこの作品の全てを語っているといっても過言ではありません。(質問者が)おっしゃる通り、最後の部分は夢なのか現実なのか分からない、あえてそういう設定にしているんですね。
拡大解釈してみますと[イ・ハナさん演じる]남은/ナムンという女性も存在していなかったのでは、そういった1つの考え方も提示しています。ご覧になる皆さまに不親切にしようというのではなく、最初からこのエンディングは決まっていました。[アン・ソンギさん演じる]형만/ヒョンマンは自分の世界から抜け出して成長していくことができるのかどうか考えているのですが、そういった瞬間を表現してみたいと思いました。
Q:アン・ソンギさんはベテランでフィルムの作品にずっと出演されてきた方ですが、今回デジタル撮影ということでアン・ソンギさんから何か感想とか、ありましたでしょうか?
A:彼の俳優生活50周年の節目の都市にこの映画を撮っていたんですね。これまで多くの映画に出演されていますが、デジタル映画はこれが初めてということでした。撮影しながら、今回24回に分けてとったのですが、普通の映画ではどこか1回くらいは出番がないのですが、毎回の撮影に1回も欠かさず出たのも俳優生活50年間の中で初めてだ、ということをおっしゃっていました。
Q:相手役のイ・ハナさんが決まったエピソードなどをお教えいただければと思います。有名な俳優さんであるアン・ソンギさんの恋人役を20代の女性が演じるということであれば大抵の女優さんならひくのではと思ったのですが。
A:アン・ソンギ先輩とも「相手役の女優は誰にしようか」と本当にいろいろな話をしていたのですが、簡単な選択ではありませんでした。ヒョンマンからするとかなり年下の女性ということになるのですが、かと言って子供でもなく、また成熟した女性という印象でもないですし、そういった部分を兼ね備えている女優、しかも演技が上手い女優でなければならない、ということが前提としてありました。
イ・ハナさんはこれまで映画には1本くらいしか出演したことがなく、TVドラマの出演が多いんですね。例えば「恋愛時代」といったようにドラマの出演歴の方が多いのですが、今回はお願いすることになりました。またイ・ハナさんは以前大学で音楽を専攻していたので、ハナさんが直接映画で使う歌を歌う機会もありました。
以前、シネマテークという場所でアン・ソンギ先輩、イ・ハナさん、私の3人で会うことがあったんですね。そういったご縁もありましたし、アン・ソンギさんというのは映画界において象徴的な存在でして、どんな俳優でも尊敬する俳優です。ところがイ・ハナさんは映画の経験が少ないというもあってか、普通だったらアン・ソンギさんの前でかしこまってしまうのですが全くそんなこともなく、くったくもないそぶりを見せていました。例えば撮影中もアン・ソンギ先輩の肩を気軽にちょっと叩いてみたり、ほっぺたを指でつついてみたりとか、多分後輩の俳優・女優ならしないような行動も本当に気楽にやっていたので逆にそういったところがよかったのかなと思います。
Q:年の差のカップル、しかも男性の方がかなり年齢が上… そのアイディアを思いついて、製作にいたるまでの過程を教えてください。
A:私はずっと助監督だったのですが、20歳のころから映画の現場に入りまして大学も卒業しないで映画の現場に入っていたもので同い年の友人達とつきあうということがなかったんですね。[페어 러브は]友人の娘とつきあうという、それだけ聞くと過激に聞こえますが、私が描きたかったのは、私が現場で仕事をした20歳から27歳くらいまで、何をやってもうまく行かなくって、何かをやってみようとするとそれも上手くいかない。そういうことが続いていた27、8のころ、妻と知り合いました。私自身が恋愛をする前に成長できていなかった気がするんです。
普通は成長してから恋愛するものですが、私の場合は順番が逆だった気がします。ヒョンマンというのは自分の時間に閉じこもったまるで剥製のような人物なんですね。そういう人物が思いもしない、想像もしていなかった相手と恋愛をするというその点をつきつめてみたいと思い、この映画と結びつけました。
邦題は「けがれなき愛」ですが、オリジナルのタイトルは「Fair Love」です。これはスティービー・ワンダーの「All In Love Is Fair」というところから拝借してきたのですが、恋愛においてはプラスもマイナスもない気がします。愛というカテゴリの中では全てがFair(公平)という想いを込めて、タイトルを付けました。もしかしたら皆さんからタイトルの質問が出るかなと思って、先に一言付け加えました。
Q:アナログの世界をデジタルで撮ったということでしたが、とても優しい思いのする映画を見せていただいたような気がします。ありがとうございました。アン・ソンギさんとってもファンで、本日とても楽しみにしておりました。監督の次回作ですが、どんなイメージをお持ちですか? もしよろしければ…
A:実は3作品、次の作品を予定しているのですがその中の1つをご紹介しますと、その中の1つの作品にアン・ソンギ先輩に出演していただきたいと思っています。しかも日本で撮る予定があります。時代は1930年代でフィルム・ノワールのジャンルになると思います。
アン・ソンギ先輩はこれまで悪役が少なかったと思うのですが、今回は悪役です。ただありふれた悪役ではなく、韓国人のある組織のボス、日本で育って、イギリスで勉強してやがて将校になって帰ってくるという設定になっています。そこに日本人の組織のボスが出てくるのですが、おそらく日本でもよく知られた俳優を起用することになるのではと思っています。日本の組織のボスがアン・ソンギ先輩を韓国に行かせろということになるのですが、おそらく日本で撮影することになると思います。
[司会:楽しみですね。アン・ソンギさんちなみに日本語のレッスンをうけられたりするのですか]
アン・ソンギ先輩には日本語のセリフはありません。日本人の俳優に英語・日本語のセリフがあります。
[司会:アン・ソンギさんの日本語も聞いてみたい気もしますね]
アン・ソンギ先輩が大変ではないかと、配慮をしてそのようにしました。アクションとか言葉といった大変な部分は若い俳優に任せて、アン・ソンギ先輩に素敵な部分を演じてもらいたいと思います。
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